不妊治療の権威が語った「不妊治療と仕事を両立させるコツ」

私たち夫婦は共働きです。不妊治療に取り組む上で心配なのが「仕事の両立」。40代の妊活を実録リポートする連載第10回は、不妊治療の権威として知られる「蔵本ウイメンズクリニック」の蔵本武志院長が語った「不妊治療と仕事を両立させるコツ」を紹介します。

両立は難しい? 仕事を優先して不妊治療が先送りされてしまう現代日本

蔵本院長は、こうのとりフォーラムの基調講演の後半に当院のデータでは、患者の65%が共働き。これの何が問題なのかというと『治療に行く暇がない』ということと、強調しました。

 

仕事を優先して不妊治療が先送りされてしまう。これにより、どんどんと歳をとり、妊娠しにくくなる

 

食生活の改善や自己流タイミング法(※1)などによって妊娠を目指してるうちは、さほど気にならないかもしれません。
というのも、私自身、こうのとりフォーラムに参加するまではそうでした。
高齢カップルの妊活は残された時間が少ないこと、一方で、高齢出産を経験した人は、そのリスクとしっかりと向き合い、不妊治療の苦しさを乗り越えていることを理解したからこそ、仕事との両立に不安を覚えたのです。

そうなのです。
不妊治療を視野に入れたとき、目の前に立ちはだかる大きな問題が、治療と仕事の両立なのです。

 

(※1)排卵のタイミングをしっかりと把握して排卵日前に夫婦生活に取り組む妊活。このサイトでは、不妊治療のタイミング法と区別するために、これを「自己流タイミング法」と呼んでいます。

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働き方改革法で不妊治療と仕事を両立

我が国は少子化を問題視している。国も仕事を優先して不妊治療が先送りされてしまう悪しき時代の傾向に気付き、今年『働き方改革法』が施行された

 

国は2016年から、企業に対して、働きながら不妊治療を受ける社員への理解を求めてきましたが、インセンティブを与えたのです。

インセンティブ……つまり、不妊治療を行う社員に何らかのサポートをしたら恩恵を与えるというものです。
蔵本院長は、トヨタ自動車が取り組んでいる「不妊治療休暇」、九州電力が取り組んでいる「助成金」を先進例として紹介しました。

自治体も色々と取り組んでいるようで、一早く動いているのは東京都とのこと。

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不妊治療と仕事を両立させるのに一番有効なのは「職場に直接伝える」

蔵本院長は「不妊治療と仕事はどうすれば両立できるのか」についても、350人の患者を対象にアンケートをとったといいます。

結果、一番有効な方法は「職場に直接伝えること」なのだとか。

現在、日本人の18人に1人体外受精で生まれている。つまり、上司に不妊治療経験者がたくさんおり、昔と違って理解を得られることが多くなっている

 

目からウロコ……。
確かにその通りです。

 

働き方改革法案によって無下に断るわけにはいかない……という後ろ盾もある。ぜひ、職場に上司に打ち明けてもらいたいと背中を押してくれました。

それでも両立は難しく不妊治療で仕事を辞める人は多い

とはいえ、それでも仕事を辞める人……いや、辞めざるを得ない人は多いといいます。
蔵本ウイメンズクリニックの場合、患者の31.3%が「不妊退職」を選んでしまうそうです。

 

NPO法人Fine(※2)が5500人に行った調査では、もっと多く、41%が不妊退職を選んでいる

厚生労働省の調査でも同様の結果が出ており、仕事と治療の両立が難しい理由として皆、「精神面の負担の大きさ」「通院回数の多さ」などを挙げています。

 

(※2)不妊体験者を支援する会。国などへ企業の妊活支援を求める陳情活動も行っています。

不妊治療期間が3年以上になった人は高確率で仕事を辞める

蔵本院長はさらに次のように説明を続けました。
「私たちは今、なぜ、こんなにも不妊退職が多いのか……を調べているところで、学会で発表する予定なのだが1つだけ分かったことがある。それは……」

 不妊治療期間が3年以上になった人は高確率で退職している

もしも自分がその立場なら……と想像して納得してしまいました。
職場がサポートしてくれたとしても、治療が長引くと精神的・身体的負担が増大し、職場への気兼ねから退職をせざるを得ない状況になってしまうでしょう。

不妊治療は3年を区切りにして仕事と両立を

蔵本院長は
「不妊治療は3年を区切りにしてもらいたい。これこそが仕事を辞めないで取り組むコツだと思う」 と強調し、治療を長期化させないために「不妊治療の適切なステップアップ」の重要性、仕事を抱えながらでも取り組みやすい「ランダムスタート(月経周期を気にすることなくいつでもはじめられる体外受精の方法)」なども紹介しました。

蔵本クリニックでは「仕事と不妊治療の両立相談外来」も開設しているようです。

 

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