「妊活」を知った夜|妻の涙で気づいた40代夫婦の不妊治療ブログ vol.1

この記事は、40代で結婚した夫婦が、妊活と不妊治療に向き合い始めたころの体験談です。

当時の気持ちをもとに書いているため、現在の医療制度や治療内容とは異なる部分があります。

医療的な判断ではなく、ひとつの夫婦の記録として読んでいただければ幸いです。

永遠も半ばを過ぎた。

中島らも『永遠も半ばを過ぎて』より

妻の涙を見るたびに、自分の無知がどれほど彼女を傷つけていたのかを痛感します。

この連載は、40代で結婚した私たち夫婦が、妊活という言葉を知り、不妊治療に向き合い始めるまでの記録です。

私は、妻の体のことを分かっているつもりで、何も分かっていませんでした。

生理のことも、年齢と妊娠の関係も、卵子のことも、妊活における男性側の役割も。

忙しい日常の中で、見えていなかった現実がありました。

そしてある夜、妻の涙と言葉によって、私は初めてその現実に気づきました。

同じように、妊活に戸惑っている男性や、夫婦で温度差を感じている方の支えになればと思い、この記録を残します。

この記事を書いた人

妊活フォーラム編集部

40代で結婚した夫婦の妊活・不妊治療の体験をもとに、男性目線で感じたこと、知らなかったこと、夫婦で向き合う中で考えたことを記録しています。

医療的な診断や治療方針ではなく、当事者としての体験談です。体調や治療方針に不安がある場合は、医師や専門機関にご相談ください。

生理によって変化する女性の心と体を、私は理解できていなかった

私の妻は、生理が始まると、いつもつらそうでした。

以前の私は、その理由をきちんと聞こうとしていませんでした。

何かの本で「女性の心と体は、女性ホルモンの影響を受け、生理周期によって変化する」と読んだ記憶がありました。

だから私は、どこかで分かったつもりになっていました。

「生理前や生理中は、気分が不安定になるものなのだろう」

「世の中の女性は、みんなこういうものなのだろう」

そんな雑な理解で、妻のつらさを片づけていたのだと思います。

ある日、私はGoogleの検索窓に「生理 不機嫌」と打ち込みました。

検索結果には、月経前の時期はホルモンの変化によって心と体が不安定になり、イライラしたり、落ち込んだりすることがある、というような説明が並んでいました。

でも、私はそこで少し違和感を覚えました。

妻は、生理前も私にやさしく接してくれていました。

いつも私の体を気づかい、ニコニコしていることも多かったのです。

妻が本当につらそうになるのは、決まって生理が始まった日でした。

私は、妻の体に何が起きているのかをきちんと理解しようとしないまま、ただ「いつものこと」として見ていました。

今思えば、その態度こそが、妻を孤独にしていたのだと思います。

少しだけ、生理周期について

この記事を読んでいる方の中には、私と同じように、妊活を意識して初めて生理周期について学び始めた男性もいると思います。

生理周期は、一般的には月経期、卵胞期、排卵期、黄体期などに分けて説明されます。

ただし、周期の長さや症状の出方には個人差があります。

生理前につらくなる人もいれば、生理が始まってから強くつらさを感じる人もいます。

月経痛、頭痛、眠気、気分の落ち込み、イライラ、だるさなど、症状も人によって違います。

大切なのは、「女性はこういうもの」と一括りにしないことです。

目の前にいるパートナーが、何に困っていて、何を我慢しているのか。

それを聞こうとする姿勢が、私には足りませんでした。

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晩婚化は社会問題ですが、私たち夫婦も晩婚でした

私は大学卒業後、地方新聞社の記者としておよそ20年働いてきました。

昼も夜もなく取材と原稿書きに追われる毎日でした。

やりがいもありました。

使命感もありました。

それでも、ふとした瞬間に「ぼろ雑巾のような人生だ」と思うこともありました。

それでも記者を辞めたいと考えたことは、ほとんどありませんでした。

何年かに一度、「書いてよかった」「書いたから変えられた」と思える瞬間がありました。

同僚や記者仲間と一緒に誇れる、そのつかの間の高揚感が、私の背中を押し続けてくれたのだと思います。

私は自分のことを「仕事の鬼」という言葉でごまかしていました。

でも本当は、絵に描いたような社畜だったのかもしれません。

仕事ばかりの生活の中で、結婚はとうに諦めていました。

そんな私が、40歳のときに妻と出会いました。

取材対象に心を重ね、普通の人の何十倍もの経験を積んだ少し変わった人種が記者だと思っています。

しかし妻は、そんな記者の斜め上をゆく、自由で思慮深い人でした。

私は彼女に惹かれました。

彼女は、ぼろ雑巾のような私が書いた記事に価値を見つけ、とても大切にしてくれました。

夢にも思わなかった結婚でした。

お互いに40歳を超えてからの結婚でしたから、私は、子どもを授かることまで欲張るつもりはありませんでした。

妻も一度だけ、「そこまでは望めないかもしれない」と、すまなさそうに言いました。

私は「子どもは天からの授かりもの」というのだから、運に任せようと思っていました。

二人でいられるだけで、十分に幸せでした。

妻が笑うたびに、残りの人生をすべて妻のために使おうと、心の中で誓い直していました。

しかし私は、妻がどれほど深く子どもを望んでいたのかを、本当の意味では分かっていませんでした。

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「生理が来るたびに、母になれる可能性を失っていく」

ある夜、妻がいつものように「生理がきた」と言いました。

そして、大粒の涙を流しました。

私はそのとき、中島らもの小説『永遠も半ばを過ぎて』を読み返したいと思い、Amazonの画面を眺めていました。

妻が放った言葉は、本当に衝撃的でした。

油性マジックで、脳みそに直接書かれたような言葉でした。

私は、この言葉を一生忘れないと思います。

「生理が来るたびに、母になれる可能性を失っていく。女性としての価値をすべて否定されるようで、辛くて、悲しくて、悔しくて、悲しくて、悲しくて……」

もちろん、妊娠できるかどうかで女性の価値が決まるわけではありません。

子どもを産むかどうかで、人の価値が決まるわけでもありません。

それでも当時の妻は、そう感じてしまうほど追い詰められていました。

そして私は、その苦しみに気づけていませんでした。

妻は笑顔の裏で、ずっと泣いていたのです。

私は、無知を理由に、妻の気持ちを理解しようとしてこなかった自分が、今でも許せません。

人生はどこか、永遠に続くような気がしていました。

でも、私たちが永遠だと信じている多くの勘違いには、当然ですが、終わりがあります。

時間は、止まってはくれません。

年齢も、体も、可能性も、少しずつ変わっていきます。

私はその夜、初めてそれを突きつけられました。

後になって知った、年齢と妊娠のこと

後になって、年齢と妊娠の関係、卵子の数や質の変化について知りました。

当時の私は、その基本的なことさえ分かっていませんでした。

女性は、生まれたときから卵子のもとになる細胞の数が限られていること。

年齢とともに妊娠しやすさが変化していくこと。

不妊は女性だけの問題ではなく、男性側の要因が関係することもあること。

私は、そうした知識をほとんど持っていませんでした。

妻の生理周期すら、きちんと把握していませんでした。

妊活を夫婦で考えるうえで、それは大きな無理解だったと思います。

男性にとって、生理や卵子や排卵は、自分の体に直接起きることではありません。

だからこそ、知らないままにしやすい。

しかし、知らないままでいることが、パートナーを孤独にしてしまうことがあります。

私は、そのことを妻の涙で知りました。

不妊の現実は、星の数の文字となって画面を流れた

泣き疲れた妻の寝顔を見ながら、私は検索窓に「子供を授かる方法」と打ち込みました。

すると、多くの人が不妊に悩んでいる現実が、星の数の文字となって画面を流れていきました。

妊活。

不妊治療。

タイミング法。

排卵日。

基礎体温。

卵子の老化。

精液検査。

人工授精。

体外受精。

42年も生きてきた私は、その日初めて「妊活」という言葉を知りました。

遅すぎたのかもしれません。

けれど、知らないままではいられないと思いました。

妻だけに背負わせてはいけない。

妻だけが泣く妊活にしてはいけない。

その夜から、私たち夫婦の妊活が始まりました。

この連載について

この連載は、40代で結婚した夫婦が、妊活と不妊治療に向き合っていく体験談です。

医学的な正解を示すものではありません。

治療方針や制度も、当時と現在では変わっている部分があります。

それでも、当時の私たちが何を知らず、何に傷つき、何を学び、どう夫婦で歩こうとしたのか。

その記録には、今妊活に向き合っている誰かの役に立つ部分があるかもしれないと思っています。

特に、男性に読んでほしいです。

妊活は、女性だけのものではありません。

妻やパートナーが何に苦しんでいるのか、何を言えずにいるのか。

それを知ろうとすることから、妊活は始まるのだと思います。

関連して読みたい記事

妊活を始める前の準備、男性の精液検査、タイミング法については、次の記事も参考にしてください。

この夜に読もうとしていた本

この夜、私は中島らもの小説『永遠も半ばを過ぎて』を読み返そうとしていました。

この記事の冒頭に、その一節を短く引用しました。

妊活や不妊治療の実用書ではありませんが、当時の私の記憶と深く結びついている一冊です。


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