

不妊治療を始めると、「次こそは」と期待する気持ちと、「またダメだったらどうしよう」という不安が入り混じりますよね。
治療を続けても妊娠に至らない周期が続くと、「不妊治療をしても授からないことはあるの?」「どこまで続ければいいの?」と考えてしまう人もいると思います。
この記事では、不妊治療の確率の考え方、思うような結果につながらない理由、治療方針を見直すポイント、夫婦で考えたい次の一歩を、できるだけやさしく整理します
不妊治療をしても授からないことはある?
まず、いちばん大切なことからお伝えします。
これは冷たい現実を突きつけたいわけではありません。
不妊治療は、妊娠の可能性を高めるための医療です。
しかし、治療を受ければ必ず授かるというものではありません。
妊娠には、卵子、精子、卵管、子宮内膜、ホルモン、年齢、受精卵の状態、着床環境など、たくさんの要素が関わっています。
そのため、人工授精、体外受精、顕微授精などの治療を受けても、妊娠に至らない周期が続くことはあります。
ただし、妊娠に至らなかったからといって、あなたが悪いわけではありません。
努力が足りなかったわけでもありません。
治療の選び方を間違えたと決めつける必要もありません。
不妊治療では、「うまくいかなかった周期」をどう受け止め、次に何を見直すかが大切です。
「授からない確率」を考える前に知っておきたいこと
不妊治療の成功率を調べると、いろいろな数字が出てきます。
「体外受精の成功率は〇%」
「40代では妊娠率が下がる」
「何回目で妊娠する人が多い」
このような情報を読むと、自分がどこに当てはまるのか気になりますよね。
しかし、不妊治療の確率を見るときには注意が必要です。
成功率は「何を基準にするか」で変わる
不妊治療の成功率は、どの数字を見るかによって印象が変わります。
たとえば、体外受精や顕微授精では、次のような見方があります。
- 治療を始めた周期あたりの妊娠率
- 採卵あたりの妊娠率
- 胚移植あたりの妊娠率
- 妊娠後に出産まで至った割合
- 流産率
「妊娠率」と書かれていても、胚移植あたりの数字なのか、治療開始周期あたりの数字なのかで意味が違います。
胚移植まで進めた人を分母にすれば数字は高く見えます。
一方、治療を始めた人全体を分母にすると、採卵できなかった周期や移植できなかった周期も含まれるため、数字は低く見えます。
年齢によって結果は大きく変わる
不妊治療の結果に大きく関わる要素の一つが年齢です。
一般的に、年齢が上がるにつれて卵子の数や質は変化し、妊娠率は下がりやすくなります。
また、妊娠しても流産率が上がる傾向があります。
日本生殖医学会の一般向けQ&Aでも、生殖補助医療の治療成績について、妊娠率・生産率は若い年齢で高く、年齢が上がるにつれて低くなると説明されています。
これは、40代の妊活を否定する意味ではありません。
ただ、年齢によって治療の進め方や判断のスピードが変わることは、知っておいた方が良いです。
同じ年齢でも結果は人によって違う
年齢は大切な要素ですが、すべてではありません。
同じ年齢でも、
- 卵巣機能
- AMHの値
- 精子の状態
- 子宮や卵管の状態
- 過去の妊娠歴
- 治療歴
- 生活習慣
- 持病の有無
によって、治療方針や妊娠の可能性は変わります。
ネット上の平均値だけで、自分たちの可能性を判断しないでください。
大切なのは、平均の数字ではなく、あなた自身の検査結果と治療経過です。
不妊治療の主な種類と特徴
不妊治療には、段階があります。
いきなり体外受精に進む人もいれば、タイミング法や人工授精から始める人もいます。
年齢や原因、これまでの治療歴によって、選ぶべき方法は変わります。
タイミング法
タイミング法は、排卵日を予測して、妊娠しやすい時期に性交のタイミングを合わせる方法です。
排卵日を自己判断するのではなく、クリニックで卵胞の育ち具合を確認しながら進めることもあります。
比較的、身体的・経済的な負担が少ない治療ですが、年齢や不妊原因によっては、長く続けすぎない方が良い場合もあります。
人工授精
人工授精は、採取した精子を洗浄・濃縮し、排卵のタイミングに合わせて子宮内へ注入する方法です。
精子が子宮まで届く距離を短くする治療ですが、受精そのものは体内で自然に起こるのを待ちます。
タイミング法より一歩進んだ治療ですが、卵管が通っていることや、一定以上の精子の状態があることが前提になります。
体外受精
体外受精は、卵子を採取し、体の外で精子と出会わせて受精させ、できた受精卵を子宮へ戻す治療です。
卵管に問題がある場合、人工授精を何度か行っても結果につながらない場合、年齢的に早めのステップアップが必要な場合などに検討されます。
体外受精は妊娠の可能性を高める治療ですが、採卵、受精、胚の成長、移植、着床という複数のステップがあり、どこかで思うように進まないこともあります。
顕微授精
顕微授精は、顕微鏡を使って精子を卵子の中へ直接注入する方法です。
精子の数が少ない、運動率が低い、体外受精で受精しにくいなどの場合に検討されます。
男性不妊がある場合にも有力な選択肢です。
ただし、顕微授精をすれば必ず妊娠するわけではありません。
受精後に胚が育つか、子宮に戻した後に着床するかは、また別の問題です。
不妊治療をしても妊娠に至らない主な理由
不妊治療を続けても結果につながらないと、「なぜ?」と何度も考えてしまいます。
理由は一つとは限りません。
女性側、男性側、受精卵側、子宮側、そして原因不明のこともあります。
卵子の数や質の問題
年齢とともに卵子の数は減り、卵子の質も変化していきます。
卵子の質が低下すると、受精しにくくなったり、受精しても胚が育ちにくくなったり、着床しても流産につながりやすくなったりすることがあります。
これは本人の努力不足ではありません。
加齢に伴う自然な変化です。
ただし、年齢だけではなく、卵巣機能や治療への反応には個人差があります。
AMH、採卵数、受精率、胚盤胞到達率などを見ながら、医師と治療方針を相談しましょう。
精子の状態の問題
不妊の原因は女性だけにあるわけではありません。
男性側の要因も、不妊の大きな原因になります。
- 精子の数が少ない
- 精子の運動率が低い
- 精子の形に問題がある
- 精子DNAのダメージが疑われる
- 射精や勃起に関する問題がある
男性側の検査は、心理的に抵抗を感じる人もいます。
しかし、不妊治療は夫婦で取り組むものです。
女性だけが検査や治療を受け続けるのではなく、男性側の検査も早めに行うことが大切です。
受精卵が育ちにくい
採卵できても、必ず受精するわけではありません。
受精しても、必ず胚盤胞まで育つわけではありません。
体外受精や顕微授精では、
- 採卵できた数
- 成熟卵の数
- 受精率
- 分割の進み方
- 胚盤胞まで育つか
- 移植できる胚の数
を見ながら、次の治療を考えます。
胚が思うように育たない場合は、刺激方法や培養方法、採卵のタイミング、精子側の要因などを見直すことがあります。
着床しにくい
良好な胚を移植しても、必ず着床するわけではありません。
子宮内膜の厚さ、子宮内の環境、ホルモン状態、慢性子宮内膜炎、子宮筋腫、子宮内膜ポリープなどが関係することもあります。
何度か良好胚を移植しても妊娠に至らない場合は、着床に関する検査を検討することもあります。
ただし、検査を増やせば必ず答えが見つかるわけではありません。
検査の必要性、費用、保険適用の有無などを含めて、医師と相談しましょう。
原因不明のこともある
不妊治療では、検査をしても明確な原因が見つからないことがあります。
「原因不明」と言われると、どうすればよいのかわからず不安になりますよね。
しかし、原因不明は「問題がない」という意味ではありません。
現在の検査でははっきり特定できない、という意味です。
原因不明の場合も、年齢や治療歴を見ながら、タイミング法、人工授精、体外受精などを選択していきます。
治療がうまくいかない時に見直したいポイント
妊娠に至らない周期が続くと、気持ちが追い込まれてしまいます。
しかし、ただ同じ治療を続けるだけではなく、節目ごとに見直すことも大切です。
今の治療を何回続けるか決めているか
不妊治療では、「あと何回続けるか」を決めずに進めると、心もお金も消耗しやすくなります。
たとえば、
- 人工授精を何回まで行うか
- 体外受精へ進むタイミング
- 採卵方法を変えるタイミング
- 転院を考えるタイミング
- 治療を休むタイミング
を、夫婦と医師で話し合っておくと安心です。
もちろん、予定通りに進まないこともあります。
それでも、何も決めずに続けるより、「ここで一度見直す」という区切りがある方が、気持ちを保ちやすくなります。
検査結果を夫婦で共有しているか
不妊治療では、女性だけが通院し、女性だけが結果を聞き、女性だけが落ち込むという状況になりがちです。
しかし、治療は夫婦のものです。
検査結果や治療方針は、できるだけ夫婦で共有しましょう。
- どの検査で何がわかったのか
- 今の治療の目的は何か
- 次に見直すポイントは何か
- 費用はどのくらいかかるのか
- 心身の負担はどちらにどれくらいあるのか
夫婦で同じ情報を持つことで、片方だけが背負い込む状態を減らせます。
転院やセカンドオピニオンを検討する
同じクリニックで治療を続けても結果が出ない場合、転院やセカンドオピニオンを考えることも選択肢です。
これは、今のクリニックが悪いという意味ではありません。
不妊治療は、クリニックによって方針や得意分野が違います。
- 刺激方法の考え方
- 培養方針
- 男性不妊への対応
- 着床不全への検査
- 年齢別の治療方針
- 説明の丁寧さ
が異なることがあります。
「このままでいいのかな」と感じているなら、一度別の医師の意見を聞くことで、気持ちが整理されることもあります。
身体だけでなく心の限界も見る
不妊治療は、身体だけでなく心にも大きな負担がかかります。
採卵、注射、通院、判定日、リセット。
その一つひとつが心を削っていくことがあります。
治療を続けるかどうかを考える時、妊娠率や費用だけで判断しないでください。
- 通院がつらくなっていないか
- 夫婦関係がぎくしゃくしていないか
- 仕事に大きな影響が出ていないか
- 毎月の結果に気持ちが振り回されすぎていないか
- 自分を責める時間が増えていないか
心が限界に近いときは、治療を休むことも選択肢です。
休むことは、諦めることではありません。
不妊治療の費用と保険適用について
不妊治療は、経済的な負担も大きい治療です。
2022年4月から、人工授精などの一般不妊治療、体外受精・顕微授精などの生殖補助医療が保険適用となりました。
これにより、以前より費用負担が軽くなった人もいます。
ただし、すべての治療が保険で受けられるわけではありません。
保険適用には条件がある
保険適用の治療には、年齢や回数などの条件があります。
また、治療内容によっては保険診療ではなく、自費診療になる場合もあります。
先進医療として保険診療と併用できるものもありますが、すべての医療機関で同じように受けられるわけではありません。
治療前に、クリニックで次の点を確認しましょう。
- 今回の治療は保険適用か
- 自費になる項目はあるか
- 先進医療に該当するものはあるか
- 1周期あたりの目安費用はいくらか
- 薬代や検査代を含めるといくらか
- 自治体独自の助成はあるか
費用の見通しを夫婦で話し合う
不妊治療では、治療費が積み重なります。
1回の費用だけでなく、数回続けた場合の見通しも考えておく必要があります。
お金の話はしづらいかもしれません。
でも、費用の不安を一人で抱えると、治療そのものが苦しくなります。
夫婦で、
- 治療に使える金額
- 何回まで続けるか
- 貯金をどこまで使うか
- 仕事をどうするか
- 休む期間を作るか
を話し合っておきましょう。
不妊治療がつらい時に使いたい相談先
不妊治療の悩みは、家族や友人にも話しにくいことがあります。
「まだ子どもは?」
「若いうちに産んだ方がいいよ」
「考えすぎじゃない?」
そんな言葉に傷ついた人もいるかもしれません。
不妊治療は、経験した人にしかわからないつらさがあります。
一人で抱え込まず、相談先を持っておくことが大切です。
クリニックのカウンセリング
不妊治療専門クリニックの中には、カウンセリングを行っているところがあります。
治療方針だけでなく、心の負担について相談できる場合もあります。
通院先にカウンセラーがいるか、相談できる窓口があるかを確認してみましょう。
不妊専門相談センター
自治体によっては、不妊や不育症に関する相談窓口があります。
医師、助産師、看護師、臨床心理士などに相談できる場合もあります。
通院先以外の場所で話を聞いてもらえるだけでも、気持ちが整理されることがあります。
夫婦で話す時間を作る
不妊治療では、夫婦の温度差が出ることがあります。
一方は「まだ頑張りたい」。
もう一方は「少し休みたい」。
どちらが正しいという話ではありません。
感じ方が違うのは自然なことです。
ただし、話し合わないまま進むと、片方だけが我慢する形になりやすいです。
治療の話をする日を決める。
感情的になったら一度中断する。
結論を急がない。
相手を責めない。
このように、話し合いのルールを決めておくと、少し話しやすくなります。
授からない時に考えたい次の選択肢
不妊治療を続けても思うような結果につながらない時、次の選択肢を考えることがあります。
ここで大切なのは、「授からなかったらこれしかない」と追い込まないことです。
選択肢は、夫婦の価値観や人生観によって変わります。
治療方針を変える
まず考えたいのは、治療方針の見直しです。
- 人工授精から体外受精へ進む
- 体外受精から顕微授精を検討する
- 刺激方法を変える
- 採卵を優先する
- 凍結胚移植の方針を見直す
- 男性不妊の治療を検討する
- 転院する
同じ治療を続けるのではなく、どこを変えられるのかを医師に確認しましょう。
治療を休む
治療を休むことも、立派な選択肢です。
不妊治療をしていると、「休んだら年齢が進んでしまう」と不安になるかもしれません。
もちろん、年齢の要素は無視できません。
それでも、心身が限界の状態で続けることが、必ずしも良いとは限りません。
1周期休む。
数か月休む。
旅行に行く。
夫婦の時間を取り戻す。
治療のことを考えない日を作る。
そうした時間が、次の判断をする力になることもあります。
治療の終わり方を考える
不妊治療には、始め方だけでなく終わり方もあります。
これはとてもつらい話です。
でも、治療を続ける中で、いつか考える必要が出てくることもあります。
「何歳まで続けるか」
「何回まで採卵するか」
「凍結胚を移植し終えたらどうするか」
「治療費の上限をどうするか」
「夫婦の生活をどう守るか」
このような話は、元気な時に少しずつしておく方が良いです。
判定日に大きく落ち込んでいる時に決めると、感情に引っ張られやすくなります。
養子縁組や里親制度を知る
子どもを育てたいという気持ちがある場合、養子縁組や里親制度について知ることも選択肢の一つです。
ただし、これは「不妊治療で授からなかった人の代わりの道」として軽く扱うものではありません。
養子縁組や里親制度は、子どもの人生を預かる大きな選択です。
制度の目的、手続き、年齢要件、家庭調査、研修、子どもの背景など、しっかり理解する必要があります。
関心がある場合は、自治体や児童相談所、専門機関に相談し、時間をかけて考えましょう。
夫婦二人で生きる選択
子どもを持たない人生を選ぶ夫婦もいます。
これは「諦め」ではなく、一つの人生の形です。
もちろん、すぐに受け入れられるものではないかもしれません。
何年も治療を続けてきた人ほど、気持ちの整理には時間がかかります。
でも、夫婦二人で生きる人生にも、楽しみや役割や幸せはあります。
無理に前向きになる必要はありません。
少しずつ、自分たちらしい人生を考えていけば大丈夫です。
不妊治療しても授からない確率が気になる人のQ&A
A1. あります。不妊治療は妊娠の可能性を高める医療ですが、必ず妊娠できるとは限りません。年齢、卵子や精子の状態、子宮環境、治療方法、治療回数などによって結果は変わります。妊娠に至らなかった周期が続いても、自分を責める必要はありません。
A2. 体外受精は妊娠の可能性を高める治療ですが、必ず妊娠できるわけではありません。採卵、受精、胚の成長、移植、着床という複数のステップがあり、どこかで思うように進まないこともあります。治療成績は年齢や体の状態によって大きく変わります。
A3. 年齢や治療内容によって違うため、一概には言えません。ただ、タイミング法や人工授精を何回続けるか、体外受精で何回採卵・移植するかは、あらかじめ医師と相談しておくと安心です。同じ治療を続けるだけでなく、一定回数ごとに治療方針を見直すことが大切です。
A4. 休んでも大丈夫です。治療を休むことは、諦めることではありません。心や体が限界に近いときは、一度立ち止まることで次の判断がしやすくなることもあります。休む期間や再開のタイミングは、年齢や治療状況も含めて医師と相談しましょう。
A5. まず、現在の治療が保険適用か、自費診療が含まれるかをクリニックで確認しましょう。自治体によっては独自の助成や相談窓口がある場合もあります。また、治療に使える金額や回数の目安を夫婦で話し合っておくことも大切です。
まとめ:授からない確率だけでなく、次の一歩を考える
不妊治療をしても、必ず授かるとは限りません。
この現実は、とてもつらいものです。
でも、妊娠に至らなかった周期が続いたとしても、あなたの努力が無駄だったわけではありません。
あなたが悪いわけでもありません。
夫婦の愛情が足りないわけでもありません。
不妊治療では、確率を知ることも大切です。
ただし、数字だけで自分の未来を決めつけないでください。
大切なのは、次のことです。
- 成功率は年齢や治療法、体の状態によって変わる
- 治療成績の数字は「何を分母にしているか」を確認する
- 妊娠に至らない周期が続いたら治療方針を見直す
- 男性側の検査や治療も早めに考える
- 必要なら転院やセカンドオピニオンも検討する
- 心やお金の限界も大切な判断材料にする
- 治療を休むことは諦めではない
- 夫婦で人生の選択肢を少しずつ話し合う
不妊治療は、出口が見えにくい道です。
だからこそ、一人で抱え込まないでください。
医師に聞く。
夫婦で話す。
相談窓口を使う。
少し休む。
治療方針を変える。
別の人生の形を考える。
どの選択も、あなたが自分の人生を大切にするための一歩です。
今すぐ答えを出さなくても大丈夫です。
焦らず、責めず、夫婦で納得できる道を少しずつ探していきましょう。
おまけ:不妊治療に悩んでいる人に読んでほしい記事
不妊治療が思うように進まない時は、治療そのものだけでなく、仕事、お金、メンタル、クリニック選びも大切になります。
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